
【谷川俊太郎作詞 武満徹作曲『系図 ―若い人のための音楽詩―』(1992) 放送初演 ―無垢な15歳の少女時代の遠野凪子による語り−】
女優の遠野なぎこさんの死去が発表されました。謹んでご安眠をお祈り致します。
私が彼女を初めて知ったのは、武満徹氏作品『系図 ―若い人のための音楽詩―』内で「少女」として朗読を務めていた遠野凪子(現・遠野なぎこ)さんを認識した事によるものです。当時15歳の無垢な少女によって、谷川俊太郎氏の詩を朗読されてゆく作品を鑑賞し、その純粋無垢な「少女」の中に何か末恐ろしい狂気へと繋がる導線にも似たものを、ほのかに知覚していたものです。
その武満徹作品において純粋無垢な語り部の「少女」だった凪子さんを、数年後には何やら複雑な生い立ちで、やさぐれた雰囲気をもってTVのバラエティーショーでお見かする事になった事に、大層驚いた記憶があります。
やはり、純粋無垢な当時15歳だった「少女」の彼女に内包されている「底知れぬ狂気」と思しきものは気のせいではなかったようでした。
とはいえ、あの「少女」の語り部を務めた凪子さんの最期があのような形になってしまった事に、大きな衝撃を覚えました。たとえ生い立ちに恵まれなくとも、どこかのタイミングないしは何かのきっかけで自身の展望を一気にプラス方向にシフトする事ができれば、また違った明日が来たかも知れないのにと、なんとも言葉にならない無念さが残ります。
改めまして、凪子さんの安らかな旅立ちをお祈りしています。
また、武満徹作品の一つを、日本での放送初演として我々に表現して見せてくれた大きな功績に感謝しています。
Julia.T.A
le 18 juillet 2025 10h45