序-1.  中世ヨーロッパ文化に於けるLiberal Arts としての
「音楽理論」

 5世紀の著作家マルティヌアス・カペラ(5世紀前半)とカッシオドルス(485頃-580頃)は、「リベラル・アーツ」(「自由七科」、若しくは「七自由学芸」)として、7つの学問を教養課程と定めました。
 その7学問とは、先ず「『3学』として文法、修辞学、弁証論、次に『4科』として算術、幾何学、天文学、音楽理論(1.)」とし、中世における教養課程の礎石となりました。
 こうした7学問は中世における学問の分類訳けの基礎となり、脈々と後世に受け継がれます。
12世紀の初期スコラ学を担う知識層の教育課程では、アウグスティヌスらの哲学書と並行し、「リベラル・アーツ」が学ばれました。

 当教室では日本式にカスタマイズされた島岡譲先生による和声学の流派を踏襲し、
メイン教科書は『総合和声』(島岡譲 著. 音楽之友社.) を用いております。

その理由として、古代ローマ時代から知識層に受け継がれた7つの教養課程の一つである「音楽理論」分野を、教養豊かな皆様方と分かち合いたいという意図を有しているためです。
 従って、和声学を当教室レッスンのメイン・レッスンと位置付けております。
 皆様も、こうした新たな世界へ向けての始めの一歩を踏み出してみませんか?

【参考文献】
1.)   K.リーゼンフーバー著. 『西洋古代・中世哲学史』. (2013年9月26日). 株式会社平凡社.
2. )  森岡敬一郎ほか 著. 『歴史(西洋史)』. (2015年9月1日). 慶應義塾大学出版会株式会社.


序-2. 現代ヨーロッパの伝統的音楽教育観に於ける
“écriture”(エクリチュール)としての
「和声学」

 学術文章を書く際には「Academic Writing」(アカデミック・ライティング)の技法があります。
これは論文などの学術文章を執筆するに当たっての書式技術を意味します。
 同様に、欧州系の伝統的作曲にもその執筆技法は存在します。
これが「écriture(エクリチュール)」と呼ばれるものです。
即ち英語の「writing」と仏語の「écriture」は、この意味においてはほぼ同義語と言えるでしょう。
仏語の「écrire」(エクリール)は「書く」という動詞であり、「écriture」(エクリチュール)は「書く行為」という意の女性名詞となります。
 作曲技法における「écriture」の細目は「和声法」、「対位法」、「フーガの書式」などが挙げられます。

 上記の作曲的執筆技法を表す「écriture」という概念について、パリ音楽院で学ばれた先人の作曲家 故 尾高惇忠氏(1830-1901)は、現代の我々に以下のようなサジェスチョンを示されています。

 「いわゆる”エクリチュール”(écriture)が、作曲家を目指す者にだけではなく、すべてのジャンルの音楽家にとって不可欠なものである、とする
フランスの伝統的な教育観(1.)」により、パリ音楽院では作曲家の学生のみならず指揮科、器楽科、声楽科の学生などで講義室は賑わっていると言われます。
 しかしながら、わが国の音楽を志す同志にとり、上記のフランスの伝統的音楽教育感は余り根づいていない現実が浮き彫りとなろうかと思います。
 尾高氏は更に以下のように述べられます。
「このような[「écriture」を学ぶ]姿勢は残念ながらわが国の音楽教育の場においていまだ十全とはいえないが、今後、エクリチュールの意義、重要性を感知し、習得を目指す学生諸君にとって、本書[和声課題50選 -著者レアリザシオン篇と課題篇]がその一助となることを強く願う次第である(2.)」と上記の課題集の前書きに明記されています。

 こうしたフランス式音楽教育観で育った私は、この一翼を担う「和声学」に焦点を当て、音楽を書いてゆく作業における執筆技法、即ち「écriture」の徹底した研究に軸足をおいた上で、皆様方にその技術をお分けできればと考えています。

 そこで当レッスンのモットーは、
【零- zéro- からのエクリチュール
     – L’écriture à partir de zéro -】
とし、どんな初歩からでも音楽を書いてゆく書式を学べるよう、常に工夫を重ねております。

 こうした先達の言葉を胸に、音を編み込んで練り上げてゆく「音創造世界」を体現する「和声学」の世界に、これから一歩踏み出してみませんか?

【参考文献】
1.)   尾高惇忠 著. 『和声課題50選 -著者レアリザシオン篇と課題篇』. 全音楽譜出版社. (2020年3月25日).


Ⅰ. 開講科目一覧

【基礎から応用への実力獲得のための各種レッスンもございます】
– 大人のリベラル・アーツ音楽サロン –

  1.  和声学
    – 4声体の音の編み込みの極意の会得 –
  2.  クラシック作品アナリーゼ
    – 先人の作品に籠められた和声及び楽式の創意解釈 –
  3.  クラシック作曲
    – 最小限の和声・楽式から遡及するソナタ形式への変遷の奥義の実習 –
    (* 上記1.~3.は、主に島岡譲先生の著書『総合和声』を用います。)
  4.  ソルフェージュ
     – 楽譜の表す楽音を読み取る為の読譜演習
    及び書き取る為の筆記練習 –
    (* ピアノ初見試奏は、主に三善晃先生のメソードを用います。)

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